空前絶後の春画ブーム
噂の日本初の大春画展を観に、これまた噂の永青文庫へ行ってきました。
平日のまっ昼間から春画ラッシュ
噂通り、平日のまっ昼間だというのに、ものすごい人、人、人。
近辺の道路はすでに「春画渋滞」状態。
あと一週間でクリスマスだというのに、
12月の後半に入ってもまだまだ紅葉盛りの都内に驚きました。
お昼ちょうどに言ったのですが、混み始めるまさに直前。
チケットを手に入れて振り返ると、長蛇の列になっていました。
夫婦別姓の問題では100年前に振り戻された日本ですが、
春画展に関しては、庶民の方が進んでいました。
・展示できる美術館が見つからなかった
・スポンサーが見つからなかった
などの紆余曲折を経て、おそるおそるやってみたらそこはもう!
満員御礼。
おじいちゃんもおばあちゃんも、おばさんもおじさんも、
若者も大学生も、みんなでワイワイガヤガヤ、
胸をときめかせて観に来ている感じでした。
山手線のラッシュアワーかと思うくらいに、
ぎゅうぎゅう詰めにされながらみんなで春画を見るというシュールさ。
山手線で夕刊フジのエロ記事閲覧はルール違反ですが、
ここはみんなが納得して観に来ています。
やや和気あいあい。
観に来ている人たちの会話の面白さ
とくに楽しかったのは、前後から漏れる会話。
50代男性と40代の妻とみられる二人の会話。
「こんなの若者が見に来たら、勉強になるよな〜」(男性)
(作品番号6,欠題春画絵巻 狩野派 17世紀前期 大英博物館所蔵 にて)
「ムフフ〜」(その妻らしき女性)
「江戸時代って、おっぱいに興味ないらしいよ〜」(20代女性)
「年寄りばっかりだと思ったら、けっこう若いお嬢さんいっぱい来てるねえ」
「大きすぎて、若い子が見たら期待しちゃうんじゃない」(60〜70代男性グループ)
ちなみに、若い女性やカップルもいらっしゃいましたが、
多くはやはり50代以降の年配層。
80代くらいの男性も、鼻息を鳴らしながら、
チケット代のお釣りをもらうのも忘れて、
館内へと猪突猛進していかれるところを、若い誘導のお兄さんに連れ戻される姿もみられました。
風刺としての春画=知性
驚いたのは、有名な絵師みんなが春画を描いていること。
なんという精神の自由さ!
現代では、エロ漫画家はエロ、そうでない人はエロを書かない。
細かく細分化されてしまいました。
だから近代は、生命の息吹であるとか、人間の総合的な悲しみや喜びの表現力にかけているんじゃないか、そう思うことが多々あります。
ただし、1722年の享保の改革では、春画は全面的に禁止されてしまい、
ペンネームを使うなど、アングラ化してしまった模様。
なんだか、現代と似てますね。
春画はもちろん、政治批判の要素もあるわけで、
政治が春画をどうにかしたくなる時代というのは、
政治が腐っていることの裏返しでしょう。
金瓶梅曽我賜宝. 初,2-4編 / 柳水亭種清 録 ; 一勇斎国芳 画
『金瓶梅』自体は、1573年ー1620年に中国で描かれた官能小説という形を取りながらの痛烈な政治、社会批判。四大奇書のひとつ。
知性というものが置き去りにされつつある時代に、
陰部そのもの、ではなくて、知性そのものを魅せつけられた気がしました。
図録は4000円と、コレクションしたくなるお高さ。
私は、前もって買っておいた
芸術新潮 2010年 12月号『恋する春画』特集で復習。
なんと、かなり詳しい解説!
今回観てきた春画の解説もかなり豊富。
これは今日一番得した感じのボリューム感です。